「劇団演技者。」「ビューティフル・サンデイ」最終話

第三話の展開があまりにも切なく、最終話のOPの時点で、もしアンハッピーエンドだったらどうしよう!と思って涙がにじんだわけですが。
「秋彦はゲイじゃないんだよ」に、えええええ!?っと驚き、「一度拾った猫を捨てるのは良心が痛むよね・・・その猫が病気だったらなおさらだよ」という自暴自棄にも見えるヒロの言葉に胸締め付けられたわけですが。
がしかし、秋彦さんがヒロくんをひっぱってって、どさあっ(擬音)と寝台*1に突き飛ばした時、気分は一転、「なにやっとん!!おっちゃん!!」という興奮した自分の叫びで台詞が聞き取れず、呼吸を整えてから巻き戻し。
「好きなんだよ!好きだからやなんだよ!」
・・・・・。なんだよ、やってらんねーよ、おれの涙を返せ!!と思いました。(最近返してほしい涙が多い私)
とにかく良かったです。本当に良かったと思います。あてられちまったけどよ・・・・(北風)


まあそれはさておきとても好きな物語で、好きすぎて何を書いて良いかわかりませんので、気になったり好きだなーと思った台詞に沿って軽く感想など述べておきたいと思います。


さて、上記の様についさっきまで二人を応援していたはずの私ですが、「なんだよつまり痴話げんかかよ!」と突如やさぐれてしまったわけで、その心境に非常に近い立場にいるんではないかと予想されるもう一人の登場人物、すなわち二人がベッドでわたわたやっている間、一瞬存在をすっかり忘れ去られたちひろさんの台詞が好きです。
「あんたたち馬鹿よ!」「あたしなんかどうすんの?ひとりだよ。あたしが死んだって誰も困る人いないんだよ」
嗚呼わかる・・・。ものすごいわかる。実はちひろに終始共感してしまいました。ちひろって一見ちょっと変わってるけど、抱えているものはすごく普遍的で一般的で、ごく普通の人なんだなと思う。


「あたし・・・あんたたちにも嫉妬してた。あんたたちが深刻な問題抱えてるってわかってても、それでも自分の方がかわいそうだって思ったの」
「いつからこんな嫌なやつになっちゃったんだろう。どんなに不幸でも人の幸せ妬むような人間だけにはなりたくないって思ってたのに」


「あんたは嫌な人間なんかじゃないよ。幸せになりたいだけだ。幸せになりたいと思ってる人間が、人の幸せを見てうらやむのは当たり前のことだよ」


なんかすごく癒された。肩にのしかかってるものが一つ軽くなった感じがしました。この秋彦という人物、女性に触られるとジンマシンが出てしまう、でもゲイじゃない、しかも実は同性に触られてもジンマシンが出るという、職業は荻窪のファミレスの店長、なんだか情けない、ちょっと短気でちょっとぬけてる、そんな秋彦という人には不思議と癒される。他人に触られると蕁麻疹が出るという体質を持ち合わせているから、人との距離に敏感なのかなと思った。精神的にも。
なんかそういう優しさ、突き放さないし近づきすぎないし、一定の距離のある場所で静かに言葉を返してくれるような優しさです。
しかし、この台詞ってよくよく考えてみると、「人の幸せ」は、『教授』とその奥さんや家族のことを言っているようにも思えるが、流れからするとむしろノロケか!? もしかしてあんた盛大にのろけてんのか!? おれたち幸せですっ☆ってことか!? と思った。
・・・・ちょっと傷つきました。うそです(笑)


この後ヒロが教授の家の様子を見に行くんだが、そこで教授と何やら話して会釈しているのとか、ちひろの手紙を発見した嬉しさに、ベランダにいる秋彦とちひろに向って思わず飛び跳ねながら手を振っちゃうのとか、ちょっととぼけてて微笑ましくて好きです。三宅さんの本領発揮の場面でしょうか、ある意味(笑)。


「ビューティフル〜」は、最初全く各登場人物の情報が無い状態から始まって、三人の会話の中からそれぞれが抱えている問題や置かれている状況が分かってくるけれど、実は三人がそう言ってるだけだから、どれが事実かははっきりしないところがある。
例えばこの後の、教授の奥さんが本当に病気なのか否か。
ヒロがちひろに気をつかって嘘をついたとしたら、どちらが嘘なのか。
教授がちひろに言ったように奥さんは本当に大病を患っていて、教授は奥さんのそばにいるためにちひろと別れたという、美しい(?)思い出として残すか、
それとも、奥さんが病気なんていうのはちひろと別れるための真っ赤な嘘で、本当は奥さんはぴんぴんしてて、やきいものトラックを追いかけるくらい健康だったという、どうしようもないと笑い飛ばせる思い出として残すか。
真実がどちらかということは実は意味がないのかな。きっとちひろはどちらであれヒロが言う言葉を信じたと思うし。
でも自分としては、「奥さん健康説」が好きです(笑)。教授は自分勝手なだめ男だったってことで。三人がそれぞれ「こんなことしてる奥さんを見た!」って競い合うように言うところ笑ったし。


こうしていつくかの問題がとりあえずの解決を見て、ヒロと秋彦が笑いあって喋っていると、ちひろの姿が部屋にない。怪訝な顔をするヒロ。なんと実はちひろは最初に彼女が冗談で言っていたように「この部屋に取り憑いた幽霊」だったのだ!!彼女はもう思い残すことがなくなったので成仏したのです・・・。
・・・というわけではなくて実はベランダにいる。(笑) この良い意味でのわざとらしい間が遊び心があって好きです。


そして最後のシーン。
「俺ね、星が降っても別れない」
「うそつけ。」
三人が降らせる銀色の紙ふぶき、三人並ぶ背中と夜空に光る無数の星。
めちゃくちゃ良いですよね。思わず太字ですけれども。
きれいすぎるというか、かわいすぎるというか、すこしくすぐったいような感じがこのドラマのラストとして申し分ないですね。これ以外はありえないと思います。
ほんのさっきまで別れる気満々だったヒロが「星が降っても別れない」って言う無邪気さと、そしてきっとそれは本当になるんじゃないかなあという安心と、秋彦の愛情ある「うそつけ。」と、笑顔で夜空を見上げるちひろと。
素敵です。
ちひろが教授に言われた言葉は、「星が降ってこないかぎり君と別れない」だったわけで、三人がまく銀色の紙ふぶきが星のように教授の家を背景にして降りそそぐ時、ちひろは教授との関係に本当に区切りをつけられられたんじゃないかなと思う。
こうして星だって降るわけで、教授の言った言葉は嘘じゃなかったとも言えるし。
一方ヒロは「星が降っても別れない」と言っていて、それが本当になるとしたら、本当に彼らがそうなるとちひろが信じられるなら、ちひろもまた救われるんじゃないかな。


うーん、いつも以上に自分の文章がよくわからないことになっていると感じますが、まあニュアンスで・・・。何よりもドラマ自体が多分に語っているので、私の感想なんてあんまり意味がないのですけれど・・・。
とにかく大好きなドラマでした。総集編も今週放送され見ましたが、それに関しては長くなったのでまた後日思い出したら書きたいと思います。

*1:いかにもな単語選択